大工の田中さん

今週のお題「人生で一番高い買い物」

4年前、転職した。前職では転勤が多かったため、当然ながら賃貸住まいだったのだが、新しい職場では転勤がまずないということもあり、妻の実家の庭に家を建てさせてもらえることになった。

家のイメージを固めつつ工務店選び。偶然、妻の小学生の時の同級生が一級建築士になり、彼の父親の工務店を継いだところだったのでそこにお願いした。概略の間取りを固めるまで約半年。子どもたちに家でどんなふうに過ごしてもらいたいかを考えた結果、家の中で走り回って遊ぶことができるように、壁や柱が少ない造りとした。

想像するのは簡単だが、実現するのは難しい。予算の都合上、木造とせざるを得なかったので、柱や梁は太くなる。既製品では太さが足りない。長くて太い木材を調達してもらうとともに、それを扱える大工さんを探してもらう。結局、隣の県から来てもらうことになった。大工さん(田中さん)は、「こんなの見たことねえよ」などと言いながら、木材を現場で切り出し図面通りに組み上げていく。建築中の家の中の作業台にはカンナが常に置いてあったので、子どもと一緒に現場を見に行ったときにはそれで端材を削らせてもらった。紙のように薄い切り屑をお尻につけて、しっぽ取りをしたりする。田中さんはそれを見て笑っていた。

それから半年して、家が完成した。田中さんは、「疲れたけどいい仕事ができた、大地震でもこの家は絶対倒れない。」と満足そうだった。うちの子どもたちはいまも元気に家の中で走り回っている。